圧延鋼板には熱間圧延と冷間圧延があり、熱延鋼板はいわゆる黒皮材で価格面において優れるが、高い寸法精度が必要とされる場合には冷延鋼板を使用する。
板厚精度が高く、表面が美麗かつ平滑でプレス成形性にも優れた冷延鋼板は、自動車・家電・建材などの幅広い分野で使用される最も需要の高い鋼板である。

JISでは「冷間圧延鋼板及び鋼帯(JIS G 3141)」と「自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯(JIS G 3151)」の2種類が規定されているが、その他にも、超深絞り鋼板や耐候性鋼板、ほうろう鋼板など、様々な特徴をもつ冷間圧延鋼板が製造されており、使用用途を考慮して適した鋼材を選定する。

材料の選択において、曲げ加工やせん断加工には一般用のSPCCを用いるのが通常であるが、深絞り加工に適した材料について成形性を見極めて選ぶ場合には、部品形状や成形方法などから核となる成形様式を判断した上で、最適な模型的成形試験を実施し、試験結果に則した特性値を備えた材質を選択する。

なお、鋼板の表面仕上げにはダル仕上げとブライト仕上げがあり、プレス加工においては擦り傷が付きづらく、潤滑油の保持力に優れたダル仕上げが適しているが、クロムめっき等の光沢のある金属めっきを施すなど、用途が外観部品となる場合には、表面が美麗で面粗さが小さいブライト仕上げを選択するのが適切である。

熱間圧延鋼板の主な種類と特性
SPHC 一般用 熱延鋼板の中で最も多く使用されており、主として平板や曲げ加工品に用いられる。
SPHD 絞り用 SPHEに次いで絞り加工性に優れた鋼板。
SPHE 深絞り用 材質が均一で深絞り加工に適している鋼板。
冷間圧延鋼板の主な種類と特性
SPCC 一般用 抜き及び曲げ加工や浅い絞り加工に適した鋼板で、加工度の少ない単純な形状の部品に使用される。
SPCD 絞り用 SPCEに次いで絞り加工性に優れた鋼板。
SPCE 深絞り用 深絞り性に優れた鋼板で、冶金学的に結晶粒を調整しているため、絞り加工後も綺麗な表面が保たれる。
冷間圧延高張力鋼板(ハイテン)の主な種類と特性
SPFC390,440,490,540,590 一般加工用 曲げ加工等の変形量が少ない加工用途に適している。
SPFC340,370 絞り加工用 絞り加工性に優れた鋼板で、幅広い加工用途に適している。
SPFC490Y,540Y,590Y,780Y,980Y 低降伏比型 高強度で低降伏点を有する鋼板で、加工性にも優れている。
SPFC340H 焼付硬化型 塗装焼付により降伏点が上昇する特性を有し、耐デンツ性が求められる用途に使用。

冷延鋼板の絞り加工事例

角絞りの側面に複数の突起がある形状で、突起の数が多い上に外側へ突き出ているため、突起加工の金型部品を組み込むためのスペースに十分な余裕が確保できないことから、その対策として、非常に複雑な特殊形状の部品を金型に組み込んで成形をしています。

材質:SPCE、板厚:t=0.3
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